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在宅勤務が「聞く」メディアを急成長させるワケ

Spotify 制作:東洋経済ブランドスタジオ AD 2020/06/30

2020年は音声メディアが本格進化する「元年」

ここ数年、ストリーミングやポッドキャスト、オーディオブックといった「音声メディア」に関するキーワードを耳にする機会が増えている。すでにアメリカでは音声メディアの市場拡大が、数字として顕著に表れているという。ビジュアルやテキストのメディアが氾濫する中、音声メディアがユーザーに選ばれている理由はどこにあるのか。TBSラジオ編成部長・ 萩原慶太郎氏に話を聞いた。

ポッドキャストの広告収入は2年で倍増

音声メディアの中でも特に成長著しいのが、ネット上に無料で配信されている「ポッドキャスト」だ。ポッドキャストとは、いわば音声ブログのようなもので、2000年代に盛り上がりを見せたものの、その後しばらくは、一部の人が使う少しマニアックなフォーマットというイメージがあった。

ところが、アメリカでは2014年頃からポッドキャストのユーザーは目に見えて増加している。Edison Reseachが2019年に行なった調査では、12歳以上のアメリカ人のうち32%が(推定9000万人)が、「先月にポッドキャストを聴いた」と回答しており、最新2020年の数字では、ポッドキャストを聴く人は37%に増えているという(※1)。アメリカのポッドキャスト配信企業の広告収入総計も大きく伸びており、2017年の約333億円から、2019年には719億円に。さらに2年後の2021年には1107億円に達する見込みだ。(※2)

また、ポッドキャストだけでなくストリーミングサービスやオーディオブックなども含めた、アメリカにおけるデジタル音声の広告収入総計を見ても、2017年は1972億円、2018年は2424億円、そして2019年は約2988億円と急成長を遂げている(※3)。

こうした音声メディアを取り巻く状況について、萩原氏はこう話す。

「かつてはポッドキャストを聴くにはいったんパソコンにデータをダウンロードした後、デバイスを同期させてから聴く必要がありました。今ではスマホとともに、大容量のネット回線が普及したことで、いつでもどこでも手軽に聴けるようになった。そこがまずは大きいと思います。アメリカの音声市場の盛り上がりを受け、日本でもさまざまな取り組みが始まり出したというのが現在の状況です」(萩原氏)

音声は、気分や印象を大きく左右する

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音声メディアが選ばれ出した背景には、音声ならではの特徴も作用している。まず挙げられるのが、音声であれば、出勤時や作業中に“ながら利用”しやすいことだ。そして、それ以上に注目したいのが、音声が聞く人へ及ぼす効果だ。

「実は音声というものは、日常のあらゆる場面で影響を与えています。例えば、あるテーマパークの最寄り駅では『ウェルカム トゥ 〜〜〜』というナレーションが流れていて、それが潜在的に来園者の高揚感をグッと高めているんです。音は目に見えないのでわかりづらいですが、人の気分や印象を左右する非常に大きな要因です。最近ではマインドフルネスや瞑想、安眠を促すための音声アプリも出てきています」(萩原氏)

音によって潜在意識に働きかけることをサウンド・プライミングといったり、シンプルにサウンドパワーと呼んだりもする。萩原さんが所属するTBSラジオは、そうした音声の持つ可能性を学術的な知見とあわせて研究する「スクリーンレスメディアラボ」を2019年に開設。その成果を自社のビジネスに生かすだけでなく、広く社会に還元しようとしている。

リモートワークで音楽配信サービスの利用が増加

ちなみに日本でも今回の緊急事態宣言に伴う在宅時間の増加に際し、ラジオの聴取者が大幅に増えたという。

「もちろんリモートワークの恩恵もあったでしょうが、ラジオ各局がコロナの特別番組ではなく、できる限り通常時と同じ内容の番組を届けたのも大きかったと思います。あえて普段と同じ内容にすることで、リスナーのみなさんに癒やしや安心感、共有感のようなものを感じていただけたのではないでしょうか」(萩原氏)

こうした傾向はラジオ以外の音声メディアでも見られている。Spotifyが2020年5月に実施したアンケート調査(※4)では、「活動時間・利用が増えたもの」として「オンラインでの音楽配信サービス」がトップとなった(2位 動画配信サービス、3位 検索サイト)。また、音楽を聴きたいと思うシーンとしては、どの層においても「気分転換」「リラックス」「元気を出したい」と言った気持ちの変化をもたらしたいと考えている声が多くなった。

一方で、オンラインコンテンツへの接触の機会が増えたことで、広告に接触する機会も増えたようだ。「Webページやソーシャルメディア上に広告が多すぎる」と答えた人は実に全体の67.3%となっており、その多くは「企業は、広告に接触するときに私が何をしているか・どういった気分かを考え、意味のある情報を出すようにしてほしい」(56.1%)と感じている。広告をきっかけに、商品やサービスに対する関心や購入が促進されている一方で、自分の気分に合った適切な量の広告を求める傾向にある。

2020年はデジタル音声メディア「元年」

![[ja-JP] toyo-keizai-1 image 4](//images.ctfassets.net/tvhwpwv117no/4bkivmll9pWDAUCUP2wNIS/4e9c119e55ad9a31c9aad61323e1c689/Copy_of__Toyo_Keizai_1-5.jpg)

そこでキーとなるのが、ラジオをはじめ音声メディアの大きな特徴ともいえる、ユーザーのエンゲージメント(思い入れや愛着心)の強さだ。

「基本的にラジオのリスナーは、番組やコメンテーターを能動的に選んで聴いています。耳に入る情報はただの情報と違い、リスナーにとって信頼性や重要性、情緒などが付加されたものとなります。だから、単に知ってもらうだけでなくリスナーに“理解”してもらいやすく、感情移入もしてもらいやすい。それにより、行動も促しやすい。そんな機能があるからか、ラジオの通販はビジュアルがないにも関わらず、テレビの通販より返品率がかなり低いという話もあります」(萩原氏)

テレビなどの視覚的メディアよりも伝えられる情報量は少ないが、能動的に聞かないと接触できないメディアである。さらに音声というメディアはより聴いている人に語りかけられる体験を生む。ビジュアルメディアよりむしろ信頼性やエンゲージメントは高まりやすい。音声コンテンツの持つ「目に見えない」からこその強みといえるだろう。これは広告にも当てはまるのではないだろうか。

「たくさんの人に認知してもらうのであれば、ほかに強力なメディアがありますが、認知してもらったうえで深く理解・共感してもらうことに関しては、音声メディアは非常に有効な媒体だと思います」(萩原氏)

さらに音声メディアには、デジタルと相性が良いという強みもある。ポッドキャストやストリーミングはそもそもデジタルありきのメディアであり、今やレガシーメディアだと思われているラジオも、IPサイマルラジオサービス・radiko(ラジコ)を通してスマホやパソコンで聴くのが普通になっている。デジタルラジオだからこそユーザーは1週間前の放送でも聴けるし、配信側はリスナー動態の正確な把握や、リスナーごとに最適な広告を届けることも可能だ。

「最近アメリカでは、ポッドキャストの音声ドラマを原作とした映画やテレビドラマが作られていて、今後日本でもその流れがくるでしょう。ちなみに弊社では、テレビドラマ『半沢直樹』シリーズのオリジナル音声ドラマをストリーミング配信したりもしています。

2020年は、こうした音声メディアとデジタルのクロスオーバーが日本で本格化する“元年”と位置づけています」(萩原氏)

2020年のデジタル音声広告の国内市場は、16億円規模と見込まれている。それが2023年には245億円規模に、そして2025年には420億円規模にまで成長すると予想される(※5)。デジタル音声市場は、現状ではまだ開拓の余地が多く残る“フロンティア”といえるだろう。

東洋経済より転載

※1[[出典]]( https://www.edisonresearch.com/infinite-dial-2019/)
※2[[出典]]( https://www.iab.com/wp-content/uploads/2019/06/Full-Year-2018-IAB-Podcast-Ad-Rev-Study_6.03.19_vFinal.pdf)
※3 出典 IAB internet advertising revenue report 2016~2018 full year results IAB-HY19-Internet-Advertising-Revenue-Report FY19-IAB-Internet-Ad Revenue Report_Final ※4 <調査概要> 調査目的:Spotifyユーザーの、新型コロナウイルスによる生活や価値観、音楽に対する変化を把握する。 調査対象:15〜69歳男女(全国)800人 調査方法:インターネット調査 調査期間:2020年5月11日(月)~13日(水) ※5 デジタルインファクト調べ

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