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魅力的な音声広告を作るには

近年、急速に市場が拡大する「デジタル音声広告」。ただ急激な拡大期にあるだけに、「どんな音声広告を作れば、広告効果がより高まるのか?」と思い迷う向きもあるのではないでしょうか。

そこで今回は、ラジオCMの世界で数々の賞を受賞し、Spotifyのデジタル音声広告の制作も行う人気コピーライター・森田一成さんにインタビュー。森田さん監修の『魅力的なデジタル音声広告を作るためのTIPS』(下記フォームよりダウンロード可能)の導入記事として、より効果的な音声広告を作るための「肝」を聞きました。

──森田さんから見た、「音声広告の可能性」とは?

正直なところ、ラジオをはじめとする「聞く文化」は、日本ではまだ浸透しきってはいないと感じています。あらためて生活を見渡してみると、音声コンテンツを楽しめる余地が、まだまだたくさん残されています。だからこそ、そこには大きな「のびしろ」があると、前向きに捉えているんです。

特に最近はリモートワークの影響でラジオを聞く人がかなり増えていますし、音声SNSのClubhouseが盛り上がっていたりもします。そうやって聞く文化がどんどん浸透し、音声メディアや音声広告が活性化されていくことに、非常に期待感を抱いていますね。

──ではさっそく、効果的なデジタル音声広告を作るための「肝」を教えてください。

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1. ターゲットを明確に意識する

まず、デジタル音声広告の大きな特徴に挙げられるのが、広告を届けるターゲットをかなり細かく指定できることです。たとえば年齢・性別・地域・時間帯、あとは聞いているプレイリストや音楽ジャンルなどですね。だから、より“狭く深く刺さる”ものを作れる。そこがデジタル音声広告の大きな強みだと思います。

その強みを存分に活かすには、ターゲットを明確にイメージして広告を作ることが重要になります。ターゲットが絞れてこそ「こういう人たちには、こんな話し手が、こんなふうに話せば響くだろうな」といったアイデアも研ぎ澄まされるからです。

もちろんラジオ広告を作る時も“こんな人に届けよう”とはイメージしますが、ラジオはリスナーの幅が広いので、ある程度間口を広げておく必要があります。対してSpotifyの音声広告は、よりピンポイントにメッセージを届けられるからこそ、対象をしっかり意識することが肝になるのかなと。

──他にもラジオ広告とデジタル音声広告の違いは何かありますか?

すごく大まかに言うと、「浮かすか、馴染ますか」の違いもあると思います。

──「浮かすか、馴染ますか」とは?

ラジオの場合、どうしても「ながら聞き」が多くなるので、聞いていないことを前提に“インパクト重視”となる部分があります。対してSpotifyのデジタル音声広告の場合、基本的にリスナーは音楽好きの人たちで、音楽と音楽の間に広告が流れる形です。つまりは聞いてもらえることが前提なので、「場に馴染みやすいもの」の方がいいのかなと思います。そういう意味での「浮かすか、馴染ますか」ですね。

──それはBGMと語りの両方に言えることですか?

そうですね。とはいえ、馴染みすぎてスルッと通過してしまっても広告としてNGなので、「馴染んでいるけど、心には残る」みたいな塩梅を意識するようにしています。

それともう一つ、リスナーに対して意識しているのが、「上から目線」にならないことです。広告って、つい上から目線になりがちなんですよね。「いい話、聞かせてあげますよ」とか「おもしろいでしょ?」みたいな感じで。でも上から目線だとメッセージが伝わりにくくなるので、僕はできるだけリスナーと「平行目線」になるよう心がけています。

──平行目線で伝える秘訣は?

クリエーターやメーカーからの目線だけでなく、生活者の立場にもきちんと立つことではないでしょうか。とはいえそれがなかなか難しかったりもするので、僕はものごとをフラットに見られる後輩にコピーを見せ、「これは上からですね」とか「ちょっと上からです」などと言ってもらっています。そして「上から」と言われたものは、どこが上からに感じさせるのかをよく考え、直します。

2. 聞き手の心に引っかかるものを

──「ターゲットを意識する」こと以外には、どんなことを重視していますか?

なんでもいいので「聞き手の心に引っかかるものを作る」ことですね。なんでもいいというのは少し乱暴な言い方ですが、楽しい、感動する、感心する、驚くとか、極端な話イラッとするでもいいので、少しでも何か心を揺さぶるものにすることが、CMとして重要だなと。

──それには、どんなことをすればいいのでしょう?

僕が大切にしているのが、商品やサービスに実際に触れたり、クライアントさんからオリエンテーションを受けたりした時の「第一印象」を大切にすることです。具体的には、その場で「あっ」と心の琴線に触れたものを、“第一印象シート”に書き出すようにしています。そこからCMの具体的なアイデアがその場で出てくる場合もありますし、持ち帰って面白そうな第一印象を深堀りして何らかのアイデアに繋げることもあります。

また、いろいろと構成を考える中でちょっと行き詰まった時に第一印象シートを見返すと、そこに大きなヒントがみつかる場合もあります。要は「第一印象を手放さずに持っておく」ということですね。たとえばSpotifyの自社広告のキャラクターであるシャッフルおじさんも、まさにSpotifyさんとの最初の打合せ中に「あっ」と思い浮かんだアイデアだったりします。

──なぜ「第一印象」が重要になるのでしょう?

結局はその第一印象が、リスナーの心にアクセスするカギになると思うんですよね。これは持論ですが自分が感じた第一印象って、“最大公約数”ではありませんが、他にも同じことを感じる人が多いと思うんです。だからそれを核にしてクリエイティブを作ることで、多くの人に共感してもらいやすくなるのかなと。

──理屈を超えた“本能的な部分”に響きやすいのでしょうかね。

そうかもしれません。ひたすら理詰めで考えたところで、人の心に響くようなものは生まれなかったりもするので、やっぱり“直感”は大事なんでしょうね。クリエイティブを作る過程で第一印象から離れていくこともありますが、心に引っかかるものを目指せば目指すほど、結局は第一印象に戻っていく感覚があります。

──他に、心に引っかかるものを作るためのポイントはありますか?

やっぱりセリフを読み上げるキャストも重要ですね。僕はキャスティングも担当することが多いのですが、なるべく自分が身近に感じられる人という観点でキャストを選んでいます。愛されキャラというか、友達にいそう、みたいな感じの方ですね。そうしたキャスティングをすることで、リスナーは親近感を持て、自分に話しかけられているような気持ちになれる。それもある種の引っかかりやアテンションを生むのかなと。

──その場合、言葉の使い方や伝え方も重要でしょうか?

そうですね、そこに関しては僕も試行錯誤の毎日ですが、キャストをしっかりイメージしながらコピーを考えることがポイントだと思います。あの人が話すのであれば多少強い言葉でも大丈夫そうだなとか、逆にこの人だったら柔らかめに下手に出た方が届きやすそうだな、とかです。要は、キャストにコピーを託すというか、キャストに思いっきり依存してしまうという(笑)。

ありがたいことに音声広告の制作現場では、一度収録されたものを聞いたうえで原稿を調整できるので、「こうした方がいいかな?」と感じたらすぐ試すようにしています。時にはキャストさんからも「こう言った方がいいのでは?」と意見をもらっていますね。

僭越ながらそんなふうにキャスティングにも興味を持ち、キャストに読み上げられた状態までをトータルで考えるようになってからコピーのレベルが上がり、評価もいただけるようになった気がします。

3. シンプルで伝わりやすいものにする

──より「伝わりやすいもの」にする工夫は、何かされていますか?

それにはなんといっても、訴求内容を絞ることが肝ではないでしょうか。ついあれも伝えよう・これも伝えようとなりがちですが、たくさん盛り込めば盛り込むほどメッセージが薄まり、かえって伝わりにくくなります。だから伝えたいメッセージは最小限にし、それを丁寧に伝えるように僕はしています。口で言うほど簡単ではないのですが…(笑)。

──文字量に関しては、いかがでしょう?

決められた時間の中で自然なスピードで話せるように、文字量を調整しています。自然なスピードというのは、キャラ設定に合っていて、かつ聞き取りやすい速度のことですね。文字数は30秒の広告であれば、100〜150字が目安ではありますが、キャストによって伝わりやすいスピードは大きく変わるので、実際に現場で時間を計りながら話してもらい、文字量を差し引きするようにしています。

──ありがとうございました。最後に、音声広告に対する今後の展望を聞かせてください。

たとえばSpotifyで音声広告を作ったら、それをラジオ広告としても使えるし、自社のウェブサイトにも置けます。業態によっては、お店やショールームでも活用できますよね。冒頭でもお話しした通り、そんなふうに音声を活用できる場面は、この先どんどん広がっていくでしょう。だからこそ企業さんは今後、音声広告を1つ持っておくと、かなり重宝すると思います。映像広告に比べると、だいぶ低コストで作れたりもしますのでね。

そんな音声広告が、より魅力的なものであると広く認識していただけるよう、今後も一球入魂で制作に携わっていきたいです。


「魅力的な音声広告を作るためのTIPS 第二弾」では、森田さん監修による音声広告デモをご紹介します。オーディエンスに響くコピー、クリエイティブを実際の音声で体験して頂けます。(3月半ば公開予定)

当記事には収められなかった秘訣も収録したダウンロード用資料『魅力的なデジタル音声広告を作るためのTIPS』もあわせてご覧ください。 下記のフォームよりダウンロード頂けます。

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森田一成
ラジオCMを中心に、コピーライター、ディレクターとして制作に携わる。株式会社ビッグフェイス 代表取締役。

主な受賞歴:ACCゴールド(2016・2015・2012)、ACCクラフトプランナー賞(2017)、 ACCクラフトディレクター賞(2017・2012)、TCC新人賞(2014)、ギャラクシー賞 選奨(2020・2018)、 ギャラクシー賞 奨励賞(2018)、ACCシルバー(2020・2017・2016・2013)、 ACCブロンズ(2019・2018・2017・2016・2012・2010・2009)、 民放連 最優秀賞(2020・2019・2018・2017・2016・2015・2014・2012)など

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