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なぜSpotifyの広告は「瞬間」をターゲティングできるのか

広告を、特定の対象にむけて届ける「ターゲティング」。実はSpotifyの広告は、他にはないユニークなターゲティングが可能です。それにより、ユーザーが「私のために届けられた広告!?」と感じる、よりパーソナルな広告体験を提供できます。なぜそうしたことが可能なのか、Spotify担当者Yさんに聞きました。

「通勤中」や「旅行中」もターゲティング可能

Spotifyの広告でとくにユニークなのが、「瞬間」をターゲティングできることです。たとえば通勤中、ディナー中、ランニング中、旅行中など、ユーザーの特定の瞬間をねらって広告を届けられるのです。くわえて、そうした行動面だけでなく、ユーザーの感情もターゲティングできます。たとえば「眠いと感じているとき」、「くつろいだ気持ちのとき」などです。

したがって、こんなピンポイントな広告施策が可能になります。たとえばジムでトレーニング中のユーザーに向け、トレーニングウェアの広告を配信したり、睡眠前にベッドで横になって音楽を聞いているユーザーに向け、睡眠グッズの広告を届けたり。あるいはユーザーがくつろいだ気持ちになっているときに、「おくつろぎ中のところ失礼します」とささやくようなナレーションで始まる音声広告を流す、などです。Spotify担当者・Yさんは、こう言います。

「そうしたパーソナルなムードの広告に触れたユーザーの多くが、こんなふうに感じると思います。『え、なんで私の今の状態がわかったの!?』『私のための広告?』と。そうなれば当然、広告に対するアテンションや印象度、好感度は高まりやすくなります」

なぜ、「瞬間」をターゲティングできるのか。その秘密は、Spotifyが「音声ストリーミングサービス」である点にあるとYさんは言います。

「具体的には『プレイリスト』と『楽曲ジャンル』がカギになります。プレイリストとは、一定のテーマのもとで集められた楽曲群のことですが、SpotifyにはSpotifyの公式プレイリストやユーザーが作ったプレイリストが、数多くあります。そしてプレイリストには、『通勤中』『ワークアウト』『トラベル』といったカテゴリーを設けています。一方でSpotifyの各楽曲は、『ロック』『ポップ』『Kポップ』『HIPHOP/RAP』『クラシック』『アニメ』といった音楽ジャンルにひもづいています。

音声はあらゆる場面に入り込める

「そして広告出稿の際に、特定のプレイリストカテゴリーや楽曲ジャンルを指定すると、該当する楽曲を聞いているユーザーに向けて広告が配信されます※1。したがって『通勤中』を選べば、通勤中である可能性が高いユーザーが、『EDM』を選べば、テンションが上がっている可能性が高いユーザーが対象になるわけです。

こうしたユーザーの視聴行動をもとにしたターゲティングは、まさにSpotifyが音声ストリーミングサービスだからこそできるものといえます。また動画や写真、文字といった視覚コンテンツとは違い、音声は『ながら視聴』がしやすいです。それも、幅広い瞬間をターゲティングできる大きな理由となっています」(Yさん)

※1 音声広告と動画広告は、「楽曲再生時」や「楽曲間のブレイク」、「楽曲をスキップ後」に配信されます

さらにYさんは、Spotifyのそもそもの仕組みが、こうした「瞬間」のターゲティングを大きく後押ししていると言います。

「実はSpotifyで聞ける約7000万曲のすべてに、メタデータと呼ばれる数値が細かく設定されています。メタデータの項目は、楽曲ジャンルから、人気度、マイナーキーかメジャーキーかにいたるまで、多岐にわたり、このメタデータのおかげで適切なプレイリストカテゴリーや楽曲ジャンルの設定が可能になっています」

そしてSpotify広告では、瞬間のターゲティング以外にも、さまざまなターゲティングが行えます。以下、ざっと挙げていきましょう。

まずは年齢、性別といった、いわゆるファーストパーティデータ(ユーザーがアカウント作成時に登録したデータ)です。年齢は13~70歳の間で、1歳きざみで指定できます。

また、広告を流す曜日や時間、地域、プラットフォームも指定できます。プラットフォームはデスクトップやモバイルに加え、スマートスピーカーなどコネクテッドデバイスも選べます。さらには、車の中にいる人を指定することも可能です。あるいは、過去に当該ブランドの広告を配信したユーザーをねらい、再び同じブランドの広告を配信する「リターゲティング」もできます。

運転中の人にむけてカーナビの広告を

もう一つ興味深いのが、ファミリー層、ゲーマー、グルメ、テック関心層といった「オーディエンスセグメント」もターゲティングできる点です。なぜそれが可能なのでしょう?

「オーディエンスセグメントは、各ユーザーの視聴傾向データをもとに類推しています。たとえば『子ども向けの音楽をよく聞いている→ファミリー層』、『よくスマートデバイスなどのコネクテッドデバイスに接続している→テック関心層』といった形ですね。オーディエンスセグメントは、年齢や性別などのファーストパーティデータと組合せてのターゲティングも可能です」(Yさん) P21-praph-01

さらには驚くことに、DSP※2独自のターゲティングを活用すれば、「郵便番号」「特定の鉄道沿線」「特定の店舗や施設」「天気」「時間帯」などをターゲティングできる場合もあります。たとえば雨が降っているときに、雨に関連する広告が流れてきたら、なかなかのサプライズとなるのではないでしょうか。DSPによっては、所得帯や役職までを指定できる場合もあります※3

こうしたDSP側のターゲティング項目も、Spotifyのファーストパーティデータと組み合せることができます。

※2 広告主がプログラマティック広告を配信する際のハブとなるプラットフォーム。※3 利用するDSPにより、ターゲティング項目は異なります。

では、こうしたSpotifyのターゲティング機能を活かすことで、実際にどんな広告施策を行えるのでしょう。Yさんに、ターゲティング事例をいくつか挙げてもらいました。

「たとえばコンビニやスーパーで買える缶入りのお酒を訴求したい場合であれば、時間帯をサラリーマンが帰宅する18~21時くらいに、曜日を週末の金曜日に指定するなどで、仕事が終わってちょっとお酒を飲みたい気分の人たちにむけピンポイントに広告をあてられます。

またカーナビを訴求したい場合なら、車中ターゲティングを活用し、運転中の人に音声広告を配信するのも効果的でしょう。あるいは美容グッズの広告であれば、それぞれの年代ごとの悩みにそった複数のクリエイティブを制作し、年代別にピンポイントで配信する、という施策も行えます」

音声ストリーミングサービスならではの視聴データや、あらゆるシーンに入り込める音声の特徴を活かし、極めてパーソナルな形で届けられるSpotifyのターゲティング広告。その広告効果は、「え、なんで今の自分の状態がわかったの!?」というユーザーの感動量に比例し、とても大きなものになるのではないでしょうか。

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