お客様事例

声優6人分のファンダムが集結。「声優×音声広告」が秘める可能性 (後編)(事例:株式会社オーディオテクニカ)

声優姉弟が出演し、驚きの広告効果を生んだオーディオテクニカの音声広告には、実は続きがありました。

後編では、2020年10月にSpotify(スポティファイ)をはじめ各種メディアに出稿した、同社の新製品のワイヤレスイヤホン「ATH-SQ1TW」の広告事例をご紹介。6人の声優を効果的に配置することで生まれた熱狂とその広告効果について、同広告を手掛けたトライバルメディアハウス・高野修平さんに聞きました。

【プロフィール】 [ja-JP] 高野様 Headshot

トライバルメディアハウスマーケティングレーベル「Modern Age」
事業部レーベルヘッド/事業部部長
高野修平

マーケティング会社・トライバルメディアハウス内に、日本初のブランドマーケティングと音楽マーケティングを融合させたマーケティングレーベル「Modern Age」を設立。著書に『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング』など。

──前回に続き、オーディオテクニカのワイヤレスイヤホン「ATH-SQ1TW」でも新たに広告を作ることになった経緯を教えてください。

高野:やはり、前回の成功が大きかったです。あれだけの結果が出たことで、声優のファンダム(※)のパワーをまざまざと感じました。ただ、もともとオーディオテクニカさんにはこのファンダムマーケティングを 実施するうえでは、「継続性」の重要性を伝えていました。従来の タイアップでは短期的な取り組みになりがちですが、「継続性」することで、「売れる」だけではなく「愛される」ところまで到達しやすくなります、と。

それに対してオーディオテクニカさんも「ぜひ、続けましょう!」と熱いお言葉を返していただきました。そこで、新たに出る「ATH-SQ1TW」でも、声優のファンダムを活用したマーケティング施策を行おう、というお話に進んでいったんです。

※ 熱狂的なファン層や、そこから生み出される文化のこと

──今回制作されたのは音声広告ではなく、動画広告でした。その理由は?

高野:商材となったイヤホンは、アイコニックな6色のカラーバリエーションがあることが大きな特徴でした。それをふまえると、商品のビジュアルもきちんと見せられる動画がベストではないかと思ったんです。ただし動画にするにしても、あくまで音声マーケティングに軸を置き、声優の声がメインとなるようにはしようと。

具体的には、カット割りが多いと散漫になるので、会話する2人の手元を真上から撮るスタイルにしました。その手元には、商材のイヤホンが置かれていたり、持たれていたりする。また声優の声を立たせるために、相手役のセリフには声を付けず、字幕で見せる形にしました。

ファンが妄想し、語りたくなる要素を盛り込む

高野:そうしてカラーごとに1人の声優が出演し、イヤホンにまつわる物語を展開していく。それを6色分、ティザー動画も含め全7本制作しました。キャンペーン自体には「Color of Life」というタイトルを付けました。

ちなみに今回の動画広告はSpotifyだけでなく、SNSを中心に他のさまざまなメディアに出稿しています。Spotifyには音声広告だけでなく、動画広告の枠もきちんとあるので、Spotifyにおいても動画の形で出稿しました。

──今回は、どんなところにクリエイティブのポイントを置きましたか?
高野:前回と同じく大きな軸となったのは、やはり声優のファンの方々に「そうきたか」「わかってるなー」と言われること、ひいてはその結果「オーディオテクニカさん、ありがとう」と言われることでした。要は、広告ではありつつ、「声優の新しい声を聞けるコンテンツ」を作ろうということです。そこは変わっていません。

そこで重要になったのが、どの声優に、どのカラーで、どんな世界観の物語を展開してもらうかという「世界観と座組みづくり」です。声優がなぜその役柄なのかを、過去作やキャラクターをふまえてファンが想像できる。6色全てがそうした組み合わせとなるよう、試行錯誤しました。

──具体的にどんな組み合わせですか?
高野:種明かしするのは少し野暮ですが一例を挙げると、たとえば「ピンクブラウン」というカラーの声優には、伊藤美来さんを起用しました。

実は伊藤さんは、五つ子の女の子が登場するアニメ『五等分の花嫁』で、三女・三玖(みく)の声を担当しています。そして三玖は作品中で、オーディオテクニカ風のロゴを配したヘッドフォンを愛用している。その伊藤さんがオーディオテクニカのCMに出演しているとなれば、ファンはそうした繋がりを見つけ、「なるほどね」と喜んでもらえるのではないかなと。

加えて『五等分の花嫁』でいえば、主役であり三玖の相手役でもある風太郎の声を担当する声優・松岡禎丞さんも、「マスタード」というカラーで今回出演しています。そこでも繋がってくるわけです。
(※Color of Life キャンペーンサイトはこちらから)

大きな“マーケティングインパクト”

高野:さらに伊藤さんには、同商品の特設サイトでモデルも務めていただいています。それに関しても、特に告知はしなかったのですが伊藤さんのファンが「これ、伊藤美来じゃね?」と見つけ、SNSで拡散されていきました。商品の発売前でしたが、「Amazonで予約した!」と伊藤さんあてにリプライするファンも現れ、かなり盛り上がっていました。

もう1つ例を挙げると、「ブラック」というカラーで登場する下野紘さんは、アニメ『鬼滅の刃』で善逸の声を担当しています。特に当時は世の中で鬼滅の刃が非常に盛り上がっていたので、下野さんは善逸のイメージカラーである黄色系が順当です。でもファンの方々は、下野さんが善逸以外にもいろいろなキャラの声を担当していることも、よく知っています。

そこできちんと下野さんの文脈や背景を読み取り、どのシチュエーションが下野さんのファンダムの方々に喜んでもらえるか検討した結果、今回はあえて黄色系ではなく「ブラック」を当て込みました。

加えて下野さんは、今回のキャンペーンと同名の『Color of Life』というミニアルバムを、以前リリースしています。ファンはもちろん、下野さんもそれに気づき、ファンと本人の双方が話題に挙げました。

こんなふうにファンが妄想したり語りたくなるような要素をたくさん散りばめることで、各声優のファンが気づいて盛り上がり、発信してくれる。端的にいえば、それが6人・6カラー分あったわけです。

さらに今回は、小売さんからも熱いフィードバックをいただきました。

──小売さんからのフィードバックとは?
高野:商材がイヤホンなので家電量販店さんが中心になるのですが、やはり今回のキャンペーンの反響は、かなり大きかったとのことでした。

こうしてSNSから小売の現場にいたるまで、前回以上に大きな盛り上がりが起こり、それによりイヤホン自体も非常によく売れました。オーディオテクニカさんとしても、大満足の成果であったと言ってくださいました。

そして、まさにこの7月9日(※2021年)からは、「Color of Life 2nd Season」が始まりました。声優6人を一新し、さらに1st Seasonとは異なる仕掛けを用意しています。

「音声広告×声優×インフルエンサーマーケ」が最強

──あらためて、「音声広告×声優」という掛け合わせについてどう感じていますか?

高野:やはり、とても大きな可能性を感じています。内田姉弟とともにキャンペーンを展開した2020年6月頃に比べると、最近はテレビも含め、声優が表舞台に出る機会がかなり増えました。あわせて声優を広告に起用するケースも増えています。

そもそも音声マーケティングは、想起を生み出したいブランドの戦いの中で、大きな力をもたらします。しかしそれだけではなく、エンタテインメント(今回でいうと声優)のファンダムを活用することで、記憶され、広がるところにまで到達できる。その結果、大きな意識変容や態度変容が起こって製品が売れ、ブランドも愛される存在となっていく。

そうした流れをふまえると、今回の事例のように声優がインフルエンサー的発信も担う「音声広告×声優×インフルエンサーマーケ」という掛け算が、音声マーケティングでは現状、一番強力だと思っています。

ただし、最大の肝となるのは、「ファンに喜んでもらうこと」です。だからこそ、声優のこれまでの文脈や商材との関係性をふまえ、愛を持って、ファンにちょっとしたサプライズを与えられる座組みを設ける。結局そこがなければ、人気の声優を起用しても、ファンから「これ、ただの仕事として出ているよね」と思われ、むしろ逆効果になりかねません。

そういう意味では、手前味噌ですが私たち「Modern Age」には、ブランドマーケティングとエンタテインメントマーケティングのプロフェッショナルが集っています。マーケティング視点とファン視点を紡ぎ、双方に価値をもたらす。それが僕たちの強みです。今後も精力的に「ファンダムに突き刺すことのできる“コンテンツ”」を生み出していきたいです。

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