ヤングカンヌ日本代表が考える音声クリエイティブの可能性
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Spotify主催の広告賞『Spotify Hits』は、広告クリエイターの皆さまに音とSpotifyの活用に関する新たなインスピレーションを提供するために設立されました。才能あるアーティストやクリエイターが作品への対価を得るとともに、たくさんのファンがその作品を楽しみ、インスピレーションを受けることによって、人間のクリエイティビティを解き放つという、Spotifyのミッションを体現するものです。 2回目の開催となる本年は、30歳以下の若手クリエーターを対象とした公募制の部門賞『Future Hitmakers』が新設されます。今回は若手クリエーターかつ、2025年度『ヤングライオンズコンペティション』(カンヌライオンズU-30部門/以下、ヤングカンヌ)日本代表に選出された世一麻恵さん、岡田大毅さんをお迎えし、広告賞に挑戦することの意義、挑戦を通して得た経験や音声クリエイティブの可能性、賞への意気込みについて語ってもらいました。
Spotify Hitsとは?
Spotify Hitsは、音声・動画・ディスプレイ・プレイリストなどの幅広いフォーマットやストリーミングデータによるターゲティングなど、Spotifyの広告の特性を活かしたクリエイティブなアプローチで、人々の心を動かし、ブランドのビジネスの成長に貢献したキャンペーンを表彰するSpotify主催の広告賞です。第2回目となる今回は、実施済みキャンペーンを対象とした3部門と、アイディアの公募制の部門『Future Hitmakers』、計4つの部門賞とグランプリを決定します。
募集要項などの詳細は Spotify Hits 2025 公式サイトをチェック
昨年の受賞作品はこちら
挑戦し続けることが、自信につながっていく
ーーご自身のこれまでの経歴と広告賞への参加経験を教えてください。
岡田さん:僕は早稲田大学在学中に『販促コンペ』という広告賞に応募し、初参加で協賛企業賞をいただくことができました。卒業後は、大手広告代理店に就職しコピーライターとCMプランナーとして活動することに。あらゆる広告賞に応募しており、社会人2年目で初めてヤングカンヌ日本代表に選出され、社会人4年目にも日本代表になることができました。今年広告代理店を退職し、1月から広告プランナーとしてフリーランスで活動しています。
世一さん:私も早稲田大学出身で、岡田は同年入学・卒業の同級生です。大学4年生の学園祭で、一緒に目玉ステージを企画運営したのも良い思い出ですね。私は昨年ヤングカンヌにこっそり初挑戦しあえなく惨敗したのですが、今年の再挑戦ではありがたいことに日本代表に選出いただきました。普段は総合商社でエンタメ・コンテンツ領域の事業開発を行っており、アニメIPの海外展開や、テレビ局とのメディア立ち上げ、現代アート事業などのほか、デジタルマーケティングや広告ディレクションにも携わってきました。
ーーおふたりが広告賞に挑戦する意義とは何ですか。
岡田さん:僕はそもそも企画することが好きなので、機会があればいつでも企画したいんです。受賞よりも企画できる場があることがメリット。 加えて、広告賞での課題って面白いですよね。予算を気にすることなく、アイデアベースで提案できるのがすごく楽しい。また、審査員の皆さんは、普段なら到底僕の企画を見てもらえないほど一流の方々ですし、そんな方々にフィードバックをもらえるのも嬉しく、僕のチャレンジの意義のひとつになっています。
世一さん:私はヤングカンヌについては「世界一を取れるチャンスがあるのに、挑戦しない理由はない」というシンプルな気持ちで臨みました。また、複数人で参加できる広告賞は、“同年代の仲間を作れる”ことも非常に大きい。会社に所属していると、どうしても組織の壁にぶつかるじゃないですか。何かを作るうえで、目指すべき場所が微妙に違ったり、それぞれの立場に気を遣わなければいけなかったり。 一方、賞にチャレンジする仲間は、みなフラットな関係。また、異なるバックグラウンドを持つ若手だけで、アウトプットまでやり遂げなければいけません。同年代のクリエイターと忖度なくアイディアを出し合うからこそ、その過程で得られる視点が、とても勉強になるんです。
ーーーー企画をする際に大切にしていることや、クリエイティブのモチベーション維持の秘訣を教えてください。
岡田さん:プランナーとして会議に企画を持っていくと、「普通に面白くない」と言われたりするんですよ。それが続くと精神的にもキツい。だから僕は “向上心よりも好奇心”で企画する ことをすごく大事にしています。向上心でなにかに取り組むと、上手くいかなかった時や悪い評価を受けた時に落ち込んでしまう。また同期の活躍や身近な課題にばかり目がいき、アイデアも縮こまってしまいます。でも好奇心で企画をすれば「どんな反応があるかな」とか「みんなにはなにを感じてもらえるだろう」というワクワクが生まれて、クリエイティブのモチベーションになる気がします。
世一さん:私はただ、作り続けた先の出会いを信じています。傍から見たら、私ってちょっと何してるか分からない人じゃないですか(笑)。総合商社からカンヌに行くとは何事だ、と。でも、走り続けていると、時々それを面白がってくれる人が現れる。そういう人の存在は本当に財産ですね。それから、自分の中では、アイディアを練ることも、財務諸表を叩くことも、実は全部地続きなんですよ。クリエイティブもビジネスも全て手段で、ゴールは「理想を世の中へ実装すること」ただ1つ。今はどのピースも未熟ですが、それらが繋がったときに出会えるであろうまだ見ぬ景色が、全てのモチベーションですね。
自分が“面白い”と感じたものを信じて、ぶつける
ーー若手クリエーターが広告賞に挑む際のポイントや心構えを教えてください。
世一さん:若手クリエーターは 「自分が良いと思っているアイディアを実験的に広告賞に出してみる」 っていうのも面白いと思うんです。仕事だと堅実な案に収まりがちなところを、賞には自分が良いと思う切り口やロジック、表現で挑んでみる。そういうものを色々なところにぶつけていくことで、思わぬ自分の強さが光る分野が見つかったりすると思います。
岡田さん:僕も広告代理店に入社したてのころは、自称・“鳴り物入り”のつもりだったのですが、どの広告賞に応募しても一切引っかからない時期が続いたんです。かたや、同世代がどんどん受賞していく。あまりに落ち込んでいたら、先輩に「同世代に負けるのを悔しがるんじゃなくて、世界にワクワクしなさい」とフィードバックをもらって。そこで価値観が変わりました。「向上心よりも好奇心」と「勝つまでやり続けるのが俺の必勝法」という心構えをバランスよく保つことは、公募へ挑む際に役立つんじゃないかと思います。
直感的にアプローチできる音声だからこそのクリエイティブとマーケティング
ーー音声広告やポッドキャストなど、音声マーケティングの成長をどのように捉えていますか。
岡田さん:多くの広告が「目を向けてもらう」とか「触ってもらう」といった、ユーザーにとって少し労力を要するコミュニケーションになっています。一方で 耳からのアプローチなら、ながら聴きもできて受け入れてもらいやすい のが魅力的ですね。また、 AIが力を伸ばしつつある現代だからこそ、”何をいうか”よりも”誰がいうか”が大事。 話者とリスナーの関係性、話者の人間性、声色や抑揚、語りかけ方が価値になる時代になるんじゃないかと思います。
岡田さんのこの日のdaylistタイトルは「underground j-idol for this moment」。アイドルの楽曲をよく聴くという岡田さんらしいプレイリスト。
世一さん:やっぱり人は、「自分が聴きたいもの」が好きですよね。デジタル音声広告は、聴かれているシーンや楽曲のジャンルなどでターゲティングが可能ですし、いつでもスマホで聴取できるので、日常のあらゆるシーンに接点がある。そういう意味で、従来の音声広告以上にひとりひとりのリスナーにマッチした、「潜在的に聴きたかった」広告に出会いやすい点が強みだと思います。 それから、広告とコンテンツとの境目がシームレスになったと感じます。つまり、 「聴いていて面白い」と感じられるようなエンタメ要素がポイントになってきている。 広告尺をまるで楽曲のように、もしくはポッドキャストのように使うこともできますし、何なら、プレイリストやコンテンツ自体にユーザーとのコミュニケーションを織り込むことも可能なわけで。「何の気なしに楽しく聞いていたら、いつの間にかその商品やブランドを好きになっていた」という状態を作れたら理想的ですね。
岡田さん:音とか声って、可能性が無限大。撮影しなくても、絵として起こさなくても、 聴き手の想像や過去の記憶によって補完される のがめちゃくちゃ面白い。CMやポスターなど平面的な表現でも、反対から文字が読める、上下逆さまにできるといったビジュアルのギミックはたくさんありますが、音のギミックも興味深い。音声で“りんご”について話しても、人によって赤いりんごを想像することもあれば、青いりんごを想像することもある。音声広告にはあらゆる可能性があると思います。
世一さん:音声広告のエンタメ性に目を向けると、「楽しさ」を持ったまま、クリエイティブが進化している点が面白い。課金してまで「出来れば見たくない」と思われてしまう広告も存在する中、 音声広告には「みんなに楽しんでもらおう」「喜んでもらえるような情報を伝えよう」といったポジティブなカルチャーを感じます。 そういえば、私が子供の頃に好きだった広告は、視聴者が思わず心を傾けてしまうものでした。音声広告は、そういった魅力の片鱗を秘めていると思っています。
世一さんのこの日のdaylistタイトルは「165bpm Wednesday afternoon」。世一さん「気合を入れたいときや集中したいとき、テンポの速い曲を聴くんです。BPMがエナジードリンクの代わりというか(笑)。ジャンルは、今表示されているK-POPから、ダンスミュージック、邦・洋ロック、ボカロまで様々。最近は、自分が生まれる前の名曲を探すのにもはまっています。縦横無尽に音楽の海を泳げるのが、Spotifyの好きなところです。」
岡田さん:音声って、きっと嘘がつきづらいんですよ。僕もSpotifyのポッドキャストで『奇奇怪怪』をよく聴いているんですけど、 入ってくる情報が音だけだからこそ、話し手の声色で本音が伝わる。 たとえば番組内でなにかの体験を紹介するにしても、「マジであれ良かったんだよ」って話で盛り上がっているなら、本当に良かったことが声で伝わってくる。逆に言葉に詰まっているようなら、その間(ま)でリスナーは気づいてしまう。だからこそ、そこに広告物が上手く馴染めば良い形でプロモーションもできると思います。
ーー今年はSpotify Hitsに『Future Hitmakers』というクリエイティブアワードが新設されます。チャレンジしていただけますか?
岡田さん:今回Spotifyさんが音声の分野でこのような賞を設けてくださったことで、これまで広告業界内で盛り上がっていた公募にも変化が生まれるような気がしていて。これに我々広告プランナーが反応してコミットすることができれば、TVCMやポスターだけではなく、さまざまなメディア、いろんなクリエイティブに越境していけると思うんですよね。音声広告のアイデアを募集する新しい試みには、ぜひみんなで乗り込んでいけたらと思っています。Future Hitmakersで絶対優勝して、いつかは審査員として呼ばれるようになりたいですね(笑)。
世一さん:もちろんです! 個人的に、Spotifyという媒体の自由さ、そして間口の広い応募条件がとても魅力的だと感じています。折角なので、様々なドメインのクリエイター仲間を巻き込んで、ひと味違う作品を作ってみたいですね。あとは、Spotifyの賞に取り組むなら、やっぱり大事なのは耳を鍛えることかなと。事前準備として、まずは良いヘッドホンを買いに行こうと思います!
ーー最後に、『Future Hitmakers』への応募を検討している若手クリエーターに応募の後押しとなるようなメッセージをお願いします。
世一さん:「挑戦はするだけタダ。秘めたクリエイティブ、世に出すなら今です。」
岡田さん:「耳を傾けましょう。Spotifyとあなたの心臓の音に」
Spotify Hits - Future Hitmakers部門について
ブランドから提供される課題に対する、Spotifyだからこそ実現可能なクリエイティブなキャンペーンアイディアを募集します。Spotifyの特性や音声ならではのテクニックを用いて課題解決に導くキャンペーン設計およびクリエイティブになっているかどうかを評価させていただきます。
募集企業は以下の通り:
- 味の素株式会社
- KDDI株式会社
- 株式会社ファミリーマート