Spotify広告を出稿する企業たちが感じた“手応えと課題”とは? 『Spotify Sessions』レポート【後編】
Spotifyは5月23日、恵比寿のBLUE NOTE PLACEにて、広告事業者向けのイベント『Spotify Sessions』を行いました。後編では、実際にSpotify広告を活用いただいている企業の担当者様をゲストにお招きしたトークセッションの様子を中心にお届けします。 前編は[こちら](https://ads.spotify.com/ja-JP/news-and-insights/spotify-sessions-japan-2024-1).
Spotify広告でのコミュニケーション設計。Spotify専用クリエイティブによる効果とクロスメディアでの相乗効果
「Spotify広告でのコミュニケーション設計。Spotify専用クリエイティブによる効果とクロスメディアでの相乗効果」では、三井住友カード株式会社 専務執行役員 マーケティング本部長の佐々木 丈也さんをゲストにお迎えし、Spotify Japan 執行役員 営業本部長の黒川 佳則とのトークセッションが行われました。
まずは佐々木さんが三井住友カードのコミュニケーション戦略について説明。「大事にしていることは『お客様をよく知る・理解する』、『ニーズややりたいことを顧客側の観点で見る』、『我々のサービスがお客さんに伝わる』の3つ。1つ目と2つ目については、カード会社として利用状況がよくわかるので、そこからお客様について理解をするべき、ということ。最後はどんなにいいものを作っても使われなければ意味がないので、伝える力を突き詰めていくべきという意味です」と語ったあと、音声広告については「数年前にコンビニの店内放送を使って広告を打った時、ブランドリフトなどで良い数値が出たため、音声広告に対しては好ましいイメージがあった。視覚メディアにはできない通勤・通学の移動時やトレーニング中、車の中など、生活シーンの中で広告でアプローチできるのは魅力で、Z世代やミレニアル世代がよく利用しているSpotifyさんだからやってみたいと思った」と、Spotify広告出稿の背景について明かしてくれました。
今回同社が出稿したのは「三井住友カード(NL)」の広告で、ゴールは同サービスの理解促進。佐々木さんいわく「以前Spotifyに広告を出稿した際は動画広告から音声を引っ張ってきていましたが、非常に違和感がある広告になってしまった」そうで、「生活シーンにしっかり入り込めるクリエイティブを3パターンほど作ってチャレンジしたところ、高い水準の結果が出た」とコメント。実際に制作した音声広告は「音楽調」「ラジオ調」「声優による朗読調」の3パターン。「普段から音楽をよく聴く『流行り物に敏感なトレンドパーソン』を想定し、ターゲット世代の方が良く聴くプレイリストを研究し、サウンドと歌詞の部分を工夫した」という音楽調のもの、「『普段からSpotifyのポッドキャストを聴いているようなナレッジパーソン』を想定して、キーワードも検索行動時のアクションを想定して作った」というラジオ調、「Spotifyユーザーに女性が多いことを踏まえ、弊社の若手のなかで人気の声優さんである諏訪部順一さんを起用し『恋愛と推し活をしているトキメキパーソン』を想定した」という声優調の音声広告という作り分けまで明かしていただきました。実際に「この広告を聴きたい」というXの投稿も多かったようです。
また、黒川が「音声広告単体で成果を求めるべきか?」というテーマについて触れ、ユーザーの利用率・利用時間を考慮してYouTube広告とSpotifyの音声広告を併用した三井住友カードの調査データを提示すると、佐々木さんは「当たり前ですけど、複数回リーチを取ることは広告手法として重要。 動画広告と音声広告を組み合わせてフリークエンシーを高めながら、YouTubeで見た方に音声広告を重ねて聴いてもらい、次のレイヤーに上がっていただくことで認知や利用意向が上昇するというのは、結果として見えている」と、広告の使い分け、出しわけの重要性について、重要なコメントを残してくださいました。
お客様の心を動かすマーケティング。Spotify上のファンダムを捉えて新規顧客獲得につなげたキャンペーン
最後のセッション「お客様の心を動かすマーケティング。Spotify上のファンダムを捉えて新規顧客獲得につなげたキャンペーン」には、アサヒビール株式会社 理事 マーケティング本部長の梶浦 瑞穂さんと、Spotify Japan クライアントパートナーの麓 裕介が登場。アサヒ生ビール 通称マルエフの事例をもとに、Spotify広告の成功事例についてトークを繰り広げました。
まずは梶浦さんが「『マルエフ』は1986年、『アサヒスーパードライ』の1年前に出た商品でした。缶ビール自体は終売していたのですが、2021年のコロナ禍で外に出れなくて日本中がモヤモヤしている時代に『Heart Warming Beer』として、改めて発売しました。弊社の商品はこれだけ美味しい、これだけの機能があるというものが多いのですが、珍しく心に訴えかけるものとして『おつかれ生です』というメッセージと共に発信しました」とメッセージ性の強い商品であることを解説。そのうえで、2023年に阪神タイガースがプロ野球で日本一に輝いた際に平田勝男ヘッドコーチがビールかけ会場で「おつかれ生です」と同製品のキャッチフレーズを引用して見せたことに言及し「私も阪神ファンなのですぐにやろうと動き、実際に平田ヘッドにアンバサダーになっていただくと、売り上げが瞬間的に1.5倍になった」と舞台裏を明かしてくださいました。
話はSpotityとの取り組みへと移り、代表的なプレイリストである『RADAR:Early Noise』『Buzz Tracker』とのタイアップで、TOMOO、Bialystocks、マルシィの3組に参加いただいた音声広告クリエイティブを展開した年末キャンペーンを紹介。麓は「アーティストの皆さんが年末のライブで1年を振り返って、SpotifyのRADAR:Early Noiseに選ばれてよかったと言ってくださっていたことからアーティストとマルエフの年末施策の親和性を感じて、ご提案をさせていただいた。Spotifyはその年に最も聞いた音楽やポッドキャストを振り返る『Spotifyまとめ』を展開していて、3組のアーティストのファンとマルエフをうまく絡ませることができた」とコメント。梶浦さんも「ファンとアーティスト、我々の全員がハッピーになる方法を考えていたときに今回の企画を提案していただいた。これはアーティストのファンの方々にも喜んでいただけると思うし、買ってくださいともいわずに『おつかれ生です』と言ってるだけの広告なんですけど、好きなアーティストとファンの方が繋がって、みんながハッピーになれるというものでした」と満足いただけたようでした。これに対し、麓は「ユーザーのみなさんはアーティストやその楽曲と出会うことを楽しみにSpotifyを使っているし、そこに入っていくのは難しいのですが、こうした取り組みを評価いただけたのは、とてもありがたいです。実際に広告についてSNSに投稿されている方もいらっしゃいましたし、文章だけではなく商品の写真を添えている方もいました」と効果の高さ・反響の大きさを明かしました。
最後に梶浦さんから「音というのは五感の一つに対して訴えかけるものでしかなくて、じっくり聴いている瞬間もあれば、色んなものに触れているなかで耳にすることもある。そのアクションのなかでどれだけ気持ちよく入っていけるかを考えなければならない。4月には『アサヒスーパードライ』のコンセプトショップをオープンさせたが、これもとあるアーティストとコラボしたら3時間の行列ができました。ファンも喜び、アーティストの方の露出も増える、そういう座組みをどんどん作って、みんながハッピーになる企画ができれば嬉しいです」というコメントをいただき、同セッションは終了しました。
閉会の挨拶として、黒川が再び登壇。「Spotifyは単なるプラットフォームではなく、クリエイターの創作活動をサポートしています。生活の一部としてSpotifyを使っていただき、その方々のポジティブな感情が広告効果に直結している。 みなさんとオーディエンスの関係を良くするよう引き続きサポートさせていただけますと嬉しいです」と全てのセッションを締め括りました。
広告に関するセッションの後には、町田発・新進気鋭の6人組バンド・Billyrromによるライブパフォーマンスも行われ、会場を盛り上げました。また、イベントの最後にはネットワーキングの時間も。DJプレイによる軽快な音楽で演出された和やかなムードの中、広告主とSpotifyメンバーとで交流を深め、この日のイベントは終了しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。Spotify広告の出稿をご検討されている広告主の皆さまは、ぜひ「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。