カンヌライオンズ 2023: クリエイティブ作りに必要な視点
Bonjour! 世界中のマーケター、広告代理店、クリエイター、インフルエンサー、テックプラットフォームが一堂に会し、その年の最も印象的なキャンペーンやイノベーションを称える「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」。特設ブース「Spotify Beach」のハイライトを振り返る、カンヌライオンズ2023シリーズの第2弾をお届けします。 [前回の記事](https://ads.spotify.com/ja-JP/news-and-insights/cannes-lions-2023-new-way-to-connect/)では、広告主がオーディエンスとより効果的につながるためのヒントを、パネルディスカッションのハイライトからお伝えしました。今回はクリエイティビティに関するパネルディスカッションより、広告とカルチャー的表現の両面から、ヒットする広告のクリエイティブを生み出す方法をご紹介します。
Spotifyでは何百万ものクリエイターがカルチャーを生み出し、それぞれが独自のクリエイティブな方法で音楽やポッドキャストを制作しています。Spotifyを通じて、彼らは作品をファンに届け、楽しんでもらっています。そして、ファンたちの反応が彼らのさらなるクリエイティビティの原動力となっています。
この絶え間ないサイクルが、ブランドにもクリエイティブな形でオーディエンスとエンゲージするための機会を生み出しますが、完璧なクリエイティブを作り出すのは、案外難しいものです。
クリエイティブかつカルチャー的共感を得られるキャンペーンを展開するため、Spotify Beachでの示唆に富んだ話の数々から、得られたインサイトをご紹介します。
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)をマーケティング戦略のDNAに
水曜ののマスタークラス「Connecting to The Sound of Culture」では、過小評価されてきたコミュニティに属するクリエイターが直面する課題と、公平性に焦点を当てたプロジェクトやキャンペーンを通じて彼らの声を増幅させるための取り組みについて探求しました。
ペプシコ社 フリトレー マーケティング部門 シニア・バイス・プレジデントのティナ・マハル氏は、同社のスナック菓子ブランド「クラッカー・ジャック」のマスコットであるクラッカー・ジルと共に、女性のスポーツ分野での活躍を促進するなど、数多くのキャンペーンで多様性を支持してきました。Spotify 広告ビジネス コミュニケーション&PR部門のグローバル責任者であるエリン・スタイルズとの対談で、ティナは、一流企業ブランドがどのようにインパクトを与えることができるかについて率直に語りました。
「私たちは世界中のコミュニティで事業を展開する巨大企業です。ですから、それらのコミュニティのためにより良いことをするのは、私たちの絶対的な責任なのです。個人的に大人になってから、ブランドが私に話しかけてくれていると感じることはありませんでしたし、少し疎外感を感じていました。例えば、「チートス」のキャンペーンは、ヒスパニック系コミュニティに疎外感を感じさせないようにするためのものです。彼らが自分たちのコミュニティや生活、仕事において活躍できるようエンパワーするのです。」
「私たちは、まず自社内での変化を確実なものにし、それがブランドや働き方として対外的にも表れるようにすることをとても重視しています。私たちはRacial Equality Journey(REJ)という目標を掲げ、多様な人材を指導的立場に置くようにしています。多様な人材を指導的立場に置くということは、考え方も多様化するということです。消費者との取り組みに共感できる人材を確保するためには、内部から始めることが非常に重要なのです。」
同パネルディスカッションに、Spotifyのシニア・クリエイティブ・プロダクション・マネージャーであるタイ・コマーが、直近スタートしたプレイリストシリーズOutside Voiceの第4シーズンのコントリビューターの一人であるラニア・ロビンソン氏(Women in Advertising and Communications, Leadership(WACL)社長)とともに参加しました。同プレイリストシリーズは、クリエイティブおよびマーケティング業界全体から、過小評価されてきたコミュニティに属するクリエイターの声や考え方を広めるためのものです。
「重要なのは、深いレベルで考えることです」とラニアは言い、業界のリーダーたちがどのようにして多様なコミュニティに貢献できるかを語りました。「色々な人が色々なことをやっていますが、組織・戦略・ビジネスの根底でやらなければいけないことがあります。危険なのは、人々が表面的なレベルで物事を進めていることであり、それでは基礎的かつ持続可能、そして絶え間なく意味のある変化をもたらすことはできません。」
信頼できるブランドであること
どのような方法でマーケティング活動に取り組もうとも、それらが常にブランドとしての誠実さを表すものでなければならないことは周知の事実でしょう。特にダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンに関しては、ブランドの不誠実な態度は消費者にすぐに見抜かれてしまいます。
「信頼性が鍵です。キャンペーンのメッセージとブランドが合っていなければなりません。」とティナは観客に語りました。「シンボルであるためにシンボルになろうとするのは、あまりいいアプローチとは言えません。誰もあなた方の努力については語ろうとしないし、何かをしようともしません。ただのシンボルだからです。より大きなものへと成長できるような、ブランドとして信頼できる何か、を持っていないのです。」
受賞歴のある脚本家、女優、監督、プロデューサー、クリエイティブ・エグゼクティブであり、近日公開予定のグレタ・ガーウィグ監督作品 映画『バービー』のメインキャストでもあるイッサ・レイ氏は、Spotifyのアーティスト・パートナーシップ部門グローバル責任者であるジョー・ハドリーとのインタビューで、テレビや映画ブランドに対して、信頼性を維持するよう促しました。
「正真正銘黒人を題材にしたものを作っているのに、人々に "いや、これは違う "と言われるとき、チームに黒人のメンバーがいないことに気付くはずです。」とイッサは言いました。「有色人種が実際に経験したこと、あるいは自分自身と同じ視点を反映したものを見聞きしているとき、それを感じることができます。」
「セットのデザインに足を引っ張られている映画を観た時のことは忘れられません。”キャラクターが自分の部屋にあんなポスターを貼るわけがない...理解できない...黒人は誰もこれに携わっていない”なんて言われるのは悪夢です。」
Spotifyのマーケティング責任者であるタジ・アラヴィが主催し、Spotifyオリジナルのポッドキャスターであるチャーリー・スミス氏と、高級ファッションブランドであるロエベのCMO チャーリー・ス ミスが参加した月曜日のマスタークラス「Building a Brand is More Than Meets The Eye」でも、同様のトピックが取り上げられました。
「ロエベの信頼性を維持するために、私たちはロエベの核心について考えます。」とチャーリーは言います。「ロエベは世界最古のラグジュアリー・ブランドのひとつであり、その中心には常に”コラボレーション・クラフト”というコンセプトがあります。マーケティングやコミュニケーションに関しては、”デジタルチャネルでできる最もアナログなことは何か”を考えます。例えば、コロナ禍には、「Show-in-a-box」という紙製のポップアップ・ショーを作り、ファッション・ショーに参加するはずだった人全員に送りました。パンデミックの間、人々が自宅でDIYをするというモーメントをうまく活用できたと思います。」
広告クリエイティブが実社会のカルチャーを反映し、オーディエンスの共感を得るには
クリエイティブ戦略や制作において、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンは最優先事項です。オーディエンスとより有意義なつながりを持てるだけでなく、メッセージングにおいてインクルーシブであろうと努力することで、オーディエンスもあなたのブランドにより親近感を抱くようになります。Spotify広告では、実際に1つの音声広告に多様な声を入れたり、人々の脳内のカルチャー的なステレオタイプを覆したり、ビデオ広告を流す際は、ダイバーシティに富んだタレントを起用したりすることができます。
イッサのアドバイスを考慮し、広告キャンペーンの舞台裏で働く人材も多様化させましょう。その効果は目に見えるものであり、皆さんのオーディエンスのロイヤルティは高まるはずです。
カンヌライオンズ2023シリーズ、次回の記事もお楽しみに!