「どっかで聞いた」を Spotify デジタル音声広告で有効活用 : 浄水器メーカー、メイスイの挑戦
♪水の星の〜子 メイ〜とスイ太で メイスイ〜 メイスイ〜…
ラジオ好きなら、一度は耳にしたことがある、この一節。1973年に創業した、大阪に拠点を置く老舗浄水器メーカー、株式会社メイスイのCMソングだ。メイとスイ太は、水の星の子という設定の同社イメージキャラクター。テレビCMでは以下のYouTube動画にあるような姿を表している(左がメイ、右がスイ太)。
メイスイはこれまで、テレビ・ラジオともにCM展開を行ってきた。だが、このCMソングの訴求力が強いため、どちらかというとラジオに軸足を置いてきたという。そんな同社が2019年夏、Spotify(スポティファイ) デジタル音声広告の利用をはじめた。
「Spotifyの利用目的は、若年層からの認知獲得」と、株式会社新通 コミュニケーションデザイン局 デジタルソリューション部に所属する高川穂野香氏は語る。新通は20年以上に渡り、メイスイのブランディング戦略を担ってきた、関西のエージェンシーだ。「ラジオCMで認知を獲得してきたメイスイさんのCMソングなら、デジタルでも成果が見込めると考えた」。
結果、この馴染み深いメイスイのCMソングをベースに作成したSpotify デジタル音声広告は、平均値を上回る効果を発揮。SNS上でも、当初の予想以上の反響を集めたという。
「どっかで聞いたことがある!」
だが、そもそもメイスイの主力は、商業施設や飲食店などに浄水機を販売するtoB事業だ。そのため、消費者との直接的な接点は決して多くない。
「だからこそ、消費者向けのブランディングにおいて重要なのは、メイスイの企業名が、しっかりと記憶に残るようなコミュニケーションだ」と、高川氏は説明する。「消費者が、日々の生活でメイスイさんの製品を目にした際、『あ、メイスイってどっかで聞いたことがあるな』と想起してもらうことが重要だと思う」。
そんなメイスイのマーケティングにおいて、大きな力を発揮してきたのがラジオCMだ。現在、同社のラジオCMは、東京、名古屋、大阪の3カ所において、ウェザーニュースや交通情報番組の前後に、通年で出稿されている。テレビCMも時期を限定して、スポットで出稿されているが、比重はラジオの方が多いという。
「メイスイさんの場合、テレビCMもスポット(時期指定)で出稿しているが、ラジオCMの方が効果が高い」と、高川氏は語る。「実際、新通が実施したあるリサーチでは、メイスイさんの場合、テレビCMよりもラジオCMの方が、認知獲得に寄与していることが確認された」。
ラジオCMの流用で「認知」を
今回、Spotify デジタル音声広告で実施したのは、メイスイの「本格サイフォン式ソーダメーカー」のプロモーションだ。インスタグラム(Instagram)の投稿キャンペーンを中心に、TwitterやSpotify、Webメディアのタイアップ記事広告を連携させ、デジタルメディアのみを駆使して展開された。その目的は、若年層に対して、当のソーダメーカーとメイスイという企業を、しっかり認知してもらうことだったという。
具体的には、インスタグラムアカウント(@sodamaker.meisui)をフォローし、指定のハッシュタグを入れるなどして、写真投稿を行ったユーザーに対して、抽選でソーダメーカーを無償提供するというもの。インスタグラム以外のメディアは、インスタ上における本キャンペーンの告知と集客のために活用された。
「去年から、SNSで『メイスイ』というワードがよく見られるようになっており、そうした傾向にうまく乗ることができれば、ソーダメーカーだけでなく、メイスイという企業の認知にも繋がるだろうと考えた」と、高川氏は振り返る。Spotify デジタル音声広告 の過去事例にも、同じ音声広告であるラジオCMを流用したものがあったため、特に企業の認知を期待していたという。
戦略的にターゲティング設定
なお、使用されたクリエイティブは、ラジオで使われるCMソングをベースにしたものと、ソーダメーカーのイメージ訴求を軸としたものの、2種類を用意。Spotifyの楽曲と楽曲の合間に配信される音声クリエイティブと連動して、デバイスのモニター画面に掲出される「コンパニオンバナー」は、すべてソーダメーカー訴求の画像クリエイティブで統一したという。
また、本施策ではSpotify デジタル音声広告のターゲティング機能を活用。Spotifyでは、年齢、性別、地域、デバイスなどのユーザーデータや、日常の習慣や気分、季節的なイベントなどのモーメントごとにまとめられたプレイリスト、そして音楽のジャンルなどでセグメントを切り、ターゲティングを行うことが可能だ。今回は、若年層へのリーチを目的としていたため、はじめに検証も兼ねて全国の20〜49歳というセグメントで配信。キャンペーンの途中から、効果の高かった25歳より少し上の層に絞って配信を行ったという。
メイスイの「本格サイフォン式ソーダメーカー」のキャンペーンが実施されたのは、2019年の7月から2カ月間。その間、もっとも効果が高かったのは、CMソングを用いたクリエイティブだった。そのため高川氏は、もうひとつのクリエイティブの配信を停止して、CMソングベースのクリエイティブへ配信量を寄せた。結果、コンパニオンバナーのCTRは、同プラットフォームにおける平均の約1.6倍を記録。音声で関心を引きつけ、ランディングページへユーザーを誘導することに成功したのだ。
「気分を盛り上げる曲と曲のあいだに、メイスイのCMソングが流れたら、確実に(ラジオとも親和性の高い)ユーザーの注意を引けると思っていた」と、高川氏は語った。たとえ、メイスイがどういう企業か知らなくても、ラジオやテレビCMによって醸成された「どこかで聞いたことがある」という感覚がトリガーとなる。
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実際に使われた、コンパニオンバナーと音声クリエイティブ
「音声広告には大いに期待」
また、Spotify デジタル音声広告の配信期間中、Spotifyで流れたメイスイのCMソングに関して、Twitterで多くの言及が見られたという。「『メイスイがSpotifyで広告出してる!w』みたいな、思わぬ反応があり、非常に驚いた」と高川氏。ラジオなどでメイスイのCMソングに触れた経験のあるユーザーが、音声広告に反応したのだろう。
高川氏はその投稿に対して、リプライを飛ばすなどして、コミュニケーションを図った。このSpotify デジタル音声広告 の活用をきっかけに、フォロワーとのコミュニケーションを以前にも増して強化。「最近では『メイスイさん』という呼び名で、フォロワーから親しまれるようにもなってきた」と語る。Twitterアカウント「ソーダメーカー 浄水器のメイスイ(@meisui_soda)」は2019年6月に開設され、フォロワーはまだ多くはない。しかし、今後も数だけではなく、エンゲージメントを高めていけるような深いコミュニケーションを続けていくという。
デジタル音声広告で、生活者との新たなコミュニケーションに挑戦した、新通とメイスイ。そのメリットについて高川氏は、特にデータに基づいてPDCAを素早く回せたり、ターゲティングをチューニングできる部分を高く評価する。
「今後、デジタル音声広告は、OOH(野外広告)などリアルな空間と連携できれば、より立体的なコミュニケーションが可能になるのではないか」と、高川氏は締めくくる。「Spotifyをはじめとした、デジタル音声広告媒体には、大いに期待している」。
Sponsored by Spotify Written by DIGIDAY Brand STUDIO Photo by 木村 有希